特集 礫・地盤に望む 月刊推進技術 Vol.24 No.8 2010
③玉石と掘進機の位置関係は、玉石の下面長手方向にローラビットによる切削面が確認できたことから、掘進機右上部外周付近に接する位置にあった。当例は推進不能となり緊急の立坑を築造した事例であるが、事前土質調査に基づき推進管の選定、工法選定(掘進機構造・耐久性)、施工方法等を十分に検討した上でのアクシデントであり不可抗力と判断された。
2.4 2010年岐阜県美濃加茂市
表-4玉石平均圧縮強度285.7MN/㎡ |
最大径650mm |
当該路線は木曽川沿いに位置して、濃飛流紋岩系の玉石分布率が高く、地下水位は管天付近にあり無水層に近い地盤であった。立坑掘削時には写真の通りの玉石層であり、推進延長250mではあるが難工事が予想された。
前述2.1~ 2.3の経験を基に、掘進機の強度の向上、セミ・シールド機構の採用、緩み土圧抑制材の注入圧・注入量管理を徹底した結果、懸念されたローラビットの損耗、カッタヘッドの磨耗は想定内におさまり、推進管の損傷もなく無事到達に至った。
玉石混り砂礫地盤(時には砂礫混り玉石地盤)を安全・確実に推進する場合は課題に対してより一層、技術の改善・開発に取組まなければならないと痛感した。
表-5 土質条件
本郷雨水幹線M532-l←Ml4-l(Φ1200路線) | |||||
流域Bor H3-N o.11 |
下水Bor H16- No.3 |
下水Bor H16- No.4 |
加重平均 | ||
路線延長 | - | - | - | 255.40m | |
推進延長 | - | - | - | 249.53m | |
対象延長 | 22.85 | 172.66 | 54.02 | 249.53m | |
土被り | 4.47 | 4.38 | 6.29 | 4.80m | |
管径 | mm | φ1200 | |||
滑材 | % | ||||
地質名 | 玉石混じり砂磯 | 玉石~砂岩 | 玉石混じり砂礫 | ||
平均N値 | 46 | 33 | 50 | 38 | |
単体体積重量γ1 | kN㎥ | 21.2 | 20.6 | 22 | 21.0 |
内部摩擦角φ1 | ° | 40.8 | 34.8 | 42 | 36.9 |
粘着力C1 | kN/㎡ | 0 | 0 | 0 | 0.0 |
単体体積重量y2 | kN/㎥ | 22 | 21.3 | 22 | 21.5 |
内部摩擦角φ2 | ° | 42 | 34.6 | 42 | 36.9 |
粘着力C2 | kN/㎡ | 0 | 16.8 | 0 | 12 |
岩圧縮強度σ | kN/㎡ | 10.3 | 10.3 | ||
玉石圧縮強度σ | kN/㎡ | 297 | 297 | 245 | 285.7 |
切削抵抗Pe | kN/㎡ | 500 | 500 | 500 | 500 |
透水係数 | m/sec | 10^-4 | |||
レキ混入率 | % | 65.6 | 52.7 | 58.4 | 55.1 |
RQD | % | 74 | 74 | ||
ズリ抵抗C | kN/㎡ | 2.02 | 1.93 | 2.02 | 1.96 |
抑制剤粘度V | mpa.s | 15,000 | 14,490 | 15,000 | 14,700 |
最大磯径 | mm | 650 | |||
地下水位(CL-) | m | 3.57 | 3.70 | 5.90 | |
水頭差 | 1.62 | 1.40 | 1.11 | 1.36m | |
切削泥水圧Pw | kN/㎡ | 16.2 | 14.0 | 11.1 | 20.0 |
玉石砂礫地盤への取組み
玉石砂礫地盤を推進する課題は以下の三点になる
(1)掘進機の耐久性
(ローラビット・カッタヘッド他)
(2)推進力の低減
(3)推進管の品質確保
(クラック・孔あき)
上記3課題の検討には対象地盤の綿密な土質調査が必要不可欠です。
①対象地盤の玉石の成因(岩種)調査
例を挙げると河川に付随するものでは、河川段丘や扇状地があります。一般的には河川段丘の玉石分布は偏っているが、扇状地では比較的均等です。岩種が分かれば凡の岩強度が推定できる。
②マトリックスの分類と粒度組成
マトリックスの分類や粒度組成はマトリックスがどの程度玉石を固定する能力を持つかの有力な判断資料になる。玉石砂磯地盤のN値は「50以上」という表記が多いが、マトリックスの支持力として判断することはできない。
③玉石の分布率と割裂強度
玉石地盤の推進計画を行う場合、礫率70%、最大径500mm以上等の表記が多いが、最多玉石径や1m当りの存在率が大きな問題点となる。玉石の割裂強度は掘進機の耐久性(ローラビット/カッタヘッド)の検討や推進管(高強度管)の選定に重要になる。
- (1)掘進機の耐久性
CMT工法の玉石・礫対応型掘進機はΦ800 ~ 1800mmの実績があるが特に需要の多い800 ~1000mmについて記す。CMT玉石礫対応掘進機は岩盤掘進機と同様の高い回転トルクを有し、玉石を破砕する工法でありローラビット・カッタヘッドに高い耐久性が求められる。
■ローラビット
センタートリコンビット、フェースローラビット、ゲージカッタ母材に超鋼チップを圧入したもので、形状はへら型、砲弾型、丸ボタン型があり玉石強度により選定する。圧砕方式はチップにより玉石表面にひび割れ破断を起し砕いてゆくが、チップと玉石の接触面は部分的であり、位置・面積・方向が毎回変わるので、チップの磨耗や損傷を増加させる。また、玉石の割裂強度次第では面板を1000KN程度押付けることがあり、ローラのベアリング耐荷力の強化を図った。
表-6 ローラビットベアリンク耐荷力
動トラスト荷重 | 140KN |
動ラジアル荷重 | 410KN |
フェースローラ・ゲージカッタの取付けは全て両持支持にて取付ける。ローラビットの寿命はチップの磨耗・欠損、母材の磨耗(母材が磨耗するとチップの脱落が起きる)、ベアリングの破損等で決定する。
当該地盤では各ローラの寿命を周動距離で判断することは難しい。玉石の強度や存在率等の因子が大きく寿命を左右する。
当工法ではカッタトルクや掘進速度と押付力の変動を一つの判断材料にするが、礫破砕時はマシンが大きく揺動するので各データの解析が難しい。 CMT工法はΦ800mから機内よりのピットの点検・交換が可能であるため「疑わしきは点検」との姿勢で対応し、早めの交換を心掛けている。
施工実績
代表的な施工事例です。
山口県宇部市
φ840mm
大中口径管改築推進工法
紹介動画あり
愛知県豊橋市
φ1000mm×1448m
500R 3箇所,700R 4箇所
新潟県
φ1350mm
可燃性ガス含有地盤
高土被り
山岳下 120m
神戸市
φ1000mm×251m
障害物
地下鉄築造時の親杭
(H300×300-9本)
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