特集 最先端技術を探せ Vol.24 No.10 2010
回想
1967年(昭和42年)推進工法に出会った筆者としては現在の1,000m、1,500mと言う推進の距離について当時は「夢の中の夢」の様な距離感で想像もできなかったものです。当時20~ 30mの道路横断、鉄道横断が主体で50mも推進しようものなら「長いなー」と溜息が出るような感覚を持っていました。
しかし1970年頃より下水道に採用されだし推進距離は100m、200mと急激に伸び出したことが思い出されます、当時建設省(現国土交通省)からは推進業界に何とか500mの推進ができる技術開発を要望されていたことが記憶に鮮明に残っております。
このことはシールド工事において500m以下の距離を施工することは非常に工事コストが不経済であることより出てきたものです。 CMT工法で500mをクリアできたのは1994年に1000mmで523mを岐阜市で推進したことが始まりです。
そして5年後にはφ1100mmで1,006m
さらに8年後にはφ1000mmで1,447m
なぜ長距離推進が必要か
ここ10年発注者が建設施工費の削減に非常に大きなウエイトを置くようになり、また周辺住民に対する経済的及び環境的影響などの「社会的コスト」の削減にも意を用いるようになったことが原因と考えられます。
開削工法は勿論ですが一般推進工事における交通障害などを原因とする「社会的コスト」を環境収支でカウントすると非常に大きな数字となる事が明らかになりました。これらを解消するためには可能な限り長延長の推進施工が望ましく、施工量も増加しております、そしてこれまで「シールド工法の独壇場とされていた1000mを超える推進延長」もかなり実績として出てまいりました。
しかしまだまだ条件的制約が多く誰でもができる状況とはなっておりませんが、確実に技術の進歩は進み、現実には夢の工事では無くなりました。
CMT工法において500m以上の推進工事は26件ありますが、平成19年以降長距離推進が増えていることが明らかです。
玉石・磯率55 ~ 95%砂分の含有率3~30%まで極端に変化し土砂の取込み制御及び方向制御に非常に苦心した。また掘進機カッタヘッドが大きく損耗し内部から補強しながら到達に至った。
CMT工法は面板加圧方式で切羽の安定を図ることより、循環泥水の比重・粘性の調整は不要であるとされているが、玉石の破砕時は推進速度が変動し面板押付力が一定しない。面板押付力が変化すると切羽が不安定になり地山の細粒分の取込み制御が難しくなった。
泥水調整(比重・粘性)を試みたが直ぐに希釈され効果が持続せず、使用材料の選定や設備の検討に思考錯誤した。 また、掘進機の面板・外周板の磨耗点検を行った所、面板補強材や硬化肉盛による補強にもかかわらず大きく磨耗していた。
ただ、CMT工法はチャンバを開放することが可能であるために、チャンバ扉を開けて掘進機内部より圧気作業により切羽を安定させた後、面板・外周板の補修・補強を行えたので無事に到達することができた。
長距離推進計画
長距離推進を計画する場合様々な問題にぶち当たります。
3.1 管径
長距離推進における管径の選択は土質、推進力設備、管内設備状況等により決定されますが基本的には、φ800~900mmでは最大延長は500~ 600mと設定しています。このことはやはり狭い中での作業性が最大の要因となります。また地盤条件や曲線が多くなったりすると中押し等の段数も増えてしまい実質不能と言うことにもなりφ800~ 900mmにおける長距離言十画は十分な計画が必要となります。
机上での計画が可であっても現実の必要な設備等の寸法において否となることもあり詳細なる検証が必要となります。そして一般的目安としてφ1000mmで1000mこれ以上の長距離計画ではφ1200mm程度の管径が望ましいと考えられます。さらに測量、保守点検、中押し、ピット交換等のことより管径は決まってまいります。
3.2 推進力計画
基本的には推進力計画が成り立たなければ長距離推進は不可能です。といって中押しが7段8段と必要となっても事実上は無理があります。中押し工法は下水道協会等においては使用する管径として1000mm以上を推奨していますが、現実CMTでは800mmより実施しています。やはり小口径においての中押しでは十分な検討が必要です。設計段階においては800~900の管径において中押しを承認するか否か、これにより全ての計画が異なります。
3.3 地盤対応および地盤の急変対応
地盤対応についてトンネル工事の基本である推進部の土質の把握をするととが全ての計画の基本となります、少なくとも100mにー箇所のボーリング調査資料がほしいものです。
土質調査に基づいて推進力計画や掘削カッタ形式等が決定されます。土質によってはカッタ形式も途中で変更することが必要となることもあります。つまり岩盤及び砂礫用のカッタと粘土用カッタとは通常異なるカッタ形式となります。
地盤に合わない型式では日進量が落ちるだけでなく推進不能となることも不思議ではありません。また岩盤や砂礫層の場合、距離が長くなると途中でのビット交換等も必要となります。このときの切羽の安全対策を考える場合通常であれば薬液による地盤改良が考えられますが、長距離推進ではできるだけ薬液注入は避けたいものです。
これはせっかくクリアランスを確保し、滑材を充填して推進抵抗を落とすことに努力してきたことを無にしてしまう恐れがあるからです。薬液は地上より圧力を管理しながら注入していくのが一般的ですが、管周部分に注入が走ってしまい管体を締め固めてしまう危険性があるからです。
一番重要な推進力管理に異常をきたし計画をストップさせてしまうことにもなりかねません。長距離推進の場合地盤の急変に対して速やかな対応が取れなければ結果的に当初の推進力計画に影響を及ぼします。何時でも切羽の土質を目で確認し適切な対応ができるような点検扉を有し、薬液注入等準備に時間のかかる対応は避け即座に対応のとれる圧気工法等の準備が必要です。
施工実績
代表的な施工事例です。
山口県宇部市
φ840mm
大中口径管改築推進工法
紹介動画あり
愛知県豊橋市
φ1000mm×1448m
500R 3箇所,700R 4箇所
新潟県
φ1350mm
可燃性ガス含有地盤
高土被り
山岳下 120m
神戸市
φ1000mm×251m
障害物
地下鉄築造時の親杭
(H300×300-9本)
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