投稿 安定した切羽管理が生む安心工法 CMT改築推進工法 No-Dig Today No.81 (2012.10)
第72工区西部浄化センター合流幹線(改築)工事 報告
3-1 宇部市における下水道事業の概要
宇部市の情報によると下水道事業は昭和23年に事業認可を受け事業に着手し、昭和36年に供用を開始しました。その後、分流式による事業に着手し、処理区域の拡大や市町村合併などを経て平成23年度末現在、3,193.2haの整備を完了し、人口普及率72.7%、管路延長は702kmとなっています。合流区域の管きょ整備は昭和30年頃から整備され、標準耐用年数である50年を経過した管路が約50%あり、陥没事故などが多くなると言われている30年を経過した管路は約90%にも達しており、陥没事故の危険性は全処理区内で高まっているのが現状です。
管きょ改善事業は平成11年度より本格的に実施していますが、老朽化に起因する事故は近年増加傾向にあり平成23年度に策定した長寿命化計画によると更なる改善事業が必要であるとされています。
3-2 工事概要
工事名:第72工区西部浄化センター合流幹線(改築)工事
工期:平成23年11月7日~平成24年7月31日
工事場所:宇部市居能町一丁目地内
既設管:φ700mm A型鉄筋コンクリート管
改築管:φ840mm レジンコンクリート管
推進延長:58.77m
土被:2.5m
水位: GL-2.0m
土質:シルト
3-3 既設管の老朽度
当該管路は昭和32年に敷設され、 50年が経過しており過去には数度にわたり小規模の陥没事故が発生しその都度補修を重ねてきたことをお聞きしました。
現場環境は上流部が栄川ポンプ場からの圧送放流口に当たり常時硫化水素が発生する環境にあるため、宇部市は硫黄酸化細菌による硫酸の生成でコンクリート管の腐食度は大きいと判断し、設計計画に先立ち検査カメラを投入して老朽度調査を実施されていました。
老朽度調査のビデオ撮影を見せていただきましたが、工事区間のすべての管の天端部分は硫酸の生成による腐食が進行しており、コンクリートが剥落して鉄筋が露出している個所や極端な場合は鉄筋も腐食し天端は大きく空洞になっている部分もありました。空洞部分の内の数か所は過去の補修に用いた鋼板の存在も確認できました。
3-4 工法の選択
既設管内のカメラ調査の結果、道路陥没の危険性が高く改修工事が喫緊の問題ですが、天端部欠落個所が数か所存在する事や全工区の管老朽度が激しいことから更生工法による改修は不可能であり改築工法の採用が決定されました。
改築工法の検討を行うに当たり、既設管の上部に接近してNTTなどの地下埋設物が輻輳している事、上部道路は生活道路であり通行止めなどが難しい事、民家が接近して土留め矢板などの施工が非常に困難な事、等々の条件から開削工法ではなく改築推進工法による施工が決定されました。
改築推進工法を採用するに当たり、当該工事の土被りは2.5mと比較的浅く、通常でも地表に影響が生じやすい深さであることに加えて、潮の干満の影響を受けて地下水位が上下するために地盤は非常に不安定である事や、 過去の陥没事故の補修に用いた鋼板が残置されていることが大きな問題でありました。
これらの諸問題を勘案したうえで「住民の生活に影響を与えない安全な工法」として、切羽管理が十分に可能であり、 しかもバルクヘッドを開放して障害物などを除去する事ができるCMT改築推進工法が採用される事となりました。
3-5 改築推進工事の施工
推進工事の施工に先立ち、過去の陥没事故補修に使用した鋼板除去を実施して障害物との遭遇を極力避けることとしました。
CMT改築推進工法用の掘進機切削部は、既設管及び地山掘削用の特殊な3種類のビットと外周保護ビットにより確実なテールボイドを構築します。切羽は面板加圧方式に加えて添加材を加えた泥土により切羽保持を図ります。この時切羽面と面板の力学的バランスを適格に把握してこれをコントロールする機能をもち、これに加えて添加材の粘性や量及び排土量の管理を正確に行うことで切羽管理を行う事としています。このように切羽管理機能を持つ掘進機はバルクヘッドの扉を開放することが可能で、これにより直接切羽を視る事ができるのは従来のCMT推進工法と同様です。
事前調査により既設管の老朽度はかなり高く既設管内への土砂流入、道路の陥没の恐れが有る為に既設管内にモルタル充填し、これを防止しました。また、過去の陥没事故補修用鋼板は前もって除去しましたが、除去済み個所以外の存在も考慮して圧気用ロック設備を配置し、これに伴う送風用ブロアー設備も備えて十分な準備の下で発進しました。
(1) CMT改築推進用掘進設備仕様
掘進機: φ1,010mm L = 2,730mm
カッター回転数: (3段変速型) 5.0・3.75・2.5rpm
原動機出力:30kW
カッタートルク :43kN・m
方向制御ジャッキ:300kN ストローク50mm×4台
圧気ロック胴:φ960mm L = 1.900mm 気積0.85立方メートル
ブロアーユニット:吐出量18立方メートル/分 39kW
施工実績
代表的な施工事例です。
山口県宇部市
φ840mm
大中口径管改築推進工法
紹介動画あり
愛知県豊橋市
φ1000mm×1448m
500R 3箇所,700R 4箇所
新潟県
φ1350mm
可燃性ガス含有地盤
高土被り
山岳下 120m
神戸市
φ1000mm×251m
障害物
地下鉄築造時の親杭
(H300×300-9本)
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