特集 管路再構築時代に求められている「改築更新技術」とは Vol.27 No.8 2013
2.4 ビット交換の必要性
改築推進工法においては、鉄筋コンクリート管を破砕しなければなりません。コンクリート破砕と鉄筋切断は必須の条件です。推進延長が長くなりますと切断用ビットの損耗や破断を想定せざるを得ません。また老朽管による道路陥没事故などが過去に発生し、これを補修した個所がある場合にはその補修の際に用いた鋼材などが残存していることもあります。そのような鋼材に遭遇してビットを破損することも想定しなければなりません。このような時には直ちにビットを交換しなければなりません。
2.5 巨石や鋼材などの障害物との遭遇
既設管の老朽度が激しくなり管天端部に空洞が生じ、この空洞から土砂や礫、さらには巨石などが管内に流入して礫だまりを形成することがあります。これらのモノは地盤内ではなくて自由空聞に有りますので容易に破砕することができません。非常に厄介なモノです。礫や巨石は先に記しました残存する補修材と同様に障害物として対処をしなければなりません。
CMT改築推進工法とは
日本の下水道管路の将来、しかも近い将来を考えると既設の老朽管対策は早急に対処すべき問題であり座視できる問題ではありません。CMT工法協会においては約10年前からこの問題に対して真剣に取り組んでおります。問題点を探り、種々の観点から研究し、計画・設計・工場実験・現場実験を繰り返しました。このような経過を経て平成23年初夏に初弾工事を完工することが出来ました。
CMT工法協会では、老朽化した既設管の改修工法であるCMT改築推進工法の施工は都市部と定めて、立地条件としては如何なる条件下においても近隣の地盤や構造物に影響も及ぼすことなく工事を完遂できる工法を完成することを開発の命題としました。
そのためには、
(1)従来の機械式推進工法に較べて数段厳しい切羽であっても、その管理を徹底することにより切羽の安定を保ちながら施工ができる工法とする。
(2)改築推進施工においては、常に過剰取込みによる切羽崩壊の危険があるためこれを防止できる工法とする。
(3)長距離推進施工や障害物との遭遇によるビットの消耗や欠損を想定し、機内からのビット交換を可能にして、工事の中断や緊急の追加立坑設置は必要としない工法とする。
(4)既設管内に流入した巨石や残置された鋼材などに遭遇するなどのアクシデントの際には切羽を目視することができ、それらを除去できる工法とする。
(5)土砂、コンクリートガラ・鉄筋などの多種多様の残土であっても連続した排土を基本として、経済的な工法とする。
などを開発のコンセプトとしました。
CMT改築推進工法の機構と設備
CMT改築推進工法開発の基盤となったCMT推進工法は岩盤推進対応機として開発されました。
CMT推進工法は強力な掘削トルクと、機内からビット交換をするためにチャンバ隔壁部に点検扉を有することを特長とした工法です。
鉄筋コンクリートの破砕に関しては、強力な掘削トルクのおかげで全く問題なく開発が進み、鉄筋の切断長さも切断ビットの刃型やピッチを検討することにより長さ50~100mm以下にすることができました。しかし、その確率が95%程度で100%に至ってないため現在は人力による選別を採用しています。
排土はスクリュコンベヤでチャンバ内から土砂を取り出し、ここで鉄筋を選別したのち、空送管を用いて坑外に搬出する連続排土方式を採用しました。
最大の問題である切羽の保護については、チャンバ内に添加材を注入し十分な混練を施し、これにより切羽に掛る土圧と水圧に対応させます。排土はスクリュコンベヤを用いて行いますが、吐出部分に取込み量調整ゲートを設置して土砂の取込み量を微調整します。このことによりチャンバ内の圧力を自在にコントロールができますので切羽の安定および過剰取込みを防止できる構造にしました。
掘進機の切羽面板の押付け力やチャンバ圧力、さらには取込み土量を数値管理することにより正確な切羽管理が可能になりました。基盤工法であるCMT推進工法に採用されておりますチャンバ隔壁部に設置した点検扉をCMT改築推進工法にも採用することにより、ビット交換、障害物対応や切羽の目視点検の課題もクリアできました。
このようにして開発されたCMT改築推進工法は現場実証実験を経て、平成22年6月、山口県宇部市ご発注の第72工区西部浄化センター合流幹線(改築)工事にご採用戴き、大中口径老朽管改築推進工事の初弾工事は成功裡に完工できました。
当該工事についてその概略をご報告いたします。
施工実績
代表的な施工事例です。
山口県宇部市
φ840mm
大中口径管改築推進工法
紹介動画あり
愛知県豊橋市
φ1000mm×1448m
500R 3箇所,700R 4箇所
新潟県
φ1350mm
可燃性ガス含有地盤
高土被り
山岳下 120m
神戸市
φ1000mm×251m
障害物
地下鉄築造時の親杭
(H300×300-9本)
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